一人一句集(104号~107号)

  一人一句 {アイウエオ順。高点句・推薦句に選ばれたものは避けて、「投句Ⅰ」(各人5句投句)のコーナーから一句選んだ。<間瀬>}

   104号(2009年12月集) 105号(2010年1月集)  106号(2010年2月集)  107号(2010年3月集) 
青木喜美子  まん中に世論置きたる菊膾  よく回る団栗独楽は兄がとる  昨日とは変らぬ空に初日の出   
浅井沙衣子  秋意いま微調整しているところ 冬紅葉明るさにある昏さかな 枯野ゆき枯野に自分を見失う   
伊串たき子  ひとり分の飯炊き上がる秋光裡  振りかえれば枯れ向日葵に行き当たる  散り急ぐ白山茶花を振り返る   
石上 邦子  霧の声聴こえる水は霧となり  十二月八日父の背負った悲しみは  頑丈な母の香りや初衣桁   
伊丹 余一  掻き回して摑む幸運冬銀河  海鼠食うふと失念のこと気付き  寒雷や手に付く酒を舐めておる   
伊藤余四斗  川雑魚を炙る煙が土間を這う  平成にいざもんぺ穿き大根抜く  クリスマスローズ果報は起きて待つ   
稲葉 千尋 霜月の葬列にいてすれ違う  政変があろうとなかろうと蔦紅葉  孕みたる蟷螂の添う活断層   
岩井 蘇翠 いわし雲さみしがりやのメモぎっしり 合併すとうがん市民の貌でいる  町の名がまた一つ消え雪降りだす   
大村 翔児  心音をかさね名残りの虫を聞く  山眠る一番近い一軒家  風呂吹食う屁理屈話ばかりなり   
奥磯 照子(岐阜)  歳月を経た出合いあり秋夕日       
奥山 和子  満月の落して行った漬物石 朝霧の牛乳左手は腰に  人と人そして綿虫すれ違う   
小野寺百合子  追いかける秋夕焼けの市電かな    凧揚げに単身赴任の父帰る  
北川 邦陽  裏返し鯛の目ほぐす山の秋  おでんの具満州樺太千島かな  雪催い机上は地上より雑多   
沓名 普子  揺れるだけ揺れて芒になりました  眠らねばならねばなんて林檎煮る  小原村ころんと無患子の神経症   
鮫島 康子  キャッキャッと檸檬が騒ぐ台所  振り向けばコスモス海いっぱいのコスモス  出水に鶴()がために張る清水あり   
首藤 明弘  小鳥来る病む記事多きこの国へ  進学校消しゴム臭き文化祭  徳利のすぐ寝かさるる年忘れ   
瀬戸優理子 黄落や夫婦のかたち未完成  寒満月もういいかいと聞いている  冬木立ようやく終止符打てたかも   
園 眞智子  ふたりして毎日日曜赤とんぼ  あんぱんを分けた遠い枯野原  シクラメンおしくらまんじゅうやさしくて   
竹内 一犀  振り返り見るコスモスは融けている  ひとりだちせぬも宜しい茸飯  冬ともし管付ペニスの位を正す   
武川 琴理  かたくなに生きて控へ目秋海棠  大旦那マンガ見てゐる日向ぼこ  聴き洩らす妖怪話冬至粥   
月野ぽぽな  煮凝りや家出のように家に居て  冬林檎星はゆっくり人運ぶ  やわらかくなります新年になります   
徳永 義子  梢紅葉羊群黙々空をゆく  パンドラの箱から残りの冬落暉  落葉美し淋しいからと電話くる   
豊原 清明 新蕎麦やしじまを結ぶ少女の手  おでん茹で老子のシーツ替える父  極月や無知と無念の一回転   
永井 清成  初鵙や柱時計のネジを巻く  神学者の貌して蟷螂枯れており 
風花や神楽の面の糸切り歯
 
 
丹羽美智鴣  ひらがなで書くと虚しいじゅうさんや  自分自身にむかついている木の葉髪  薺粥真似事などと言うまじく   
根津 洋子  唐辛子ピエロは赤い涙を流す  大根抜いて客をもてなす大皿で  一人芝居でつまずいている枯野道   
野崎 妙子  十三夜字余りのように老人来  標的や無患子という確かなもの  冬木一本人間として向き合えり   
長谷川阿以  コスモスや笑ってみても一瞬だ  消灯し一人の月光管となる  マスクには全体主義の臭いあり   
平川 義光  人は人俺は俺だよ籾を干す  音もなく吾も崩れて霜柱  小春日の字余りのようまわり道   
平子  純  鬼連れて蛇連れて紅葉狩りすなり この家の誰もいとしいさざんか咲く  門松の少なき街やざらめ雪   
藤原美恵子  炊き立てを底から混ぜる秋深し  銀杏かつ散るわたくしこれでもかと仕事  冬の風鈴粉々なのよにっぽん語   
夫馬瑳衣子  蓑虫鳴く亀井静香が読みにくい  喩うれば森繁久弥寒昴  時間から零れ綿虫と浮遊   
増田 天志  肉厚な耳朶です紅葉透ける夢  冬天へ軍馬いななく遺作展 
冬耕は銀色の翼を生やす
 
 
間瀬奈津子  トマトサラダ脳の輪切りを覗き見る  秋刀魚焼けて煙のような恋でした 凩や今さら変わらぬ好き嫌い   
松井 政典  新米のどんぶり飯の黄身ふたつ  トランプと丼飯と寒卵  憂鬱を焚き火にくべる少女かな   
松田 英子 舟を漕ぎ母コスモスへコスモスへ  冬薔薇住めば都の庭に咲く  新聞を着せ大根の置いてある   
松本たけし(愛媛)    真ん中に母さんがいる亥の子歌 一張羅俺も貴様も貼り懐炉   
湯浅真理子  霧深き福祉ビジネス疑問持つ  鰤起し天中殺を打ち砕く  人体に似たる大根に躊躇いて   
らふ亜沙弥 すぐそばに耳朶のあり秋の暮れ 蔓梅擬素顔見られてしまいけり  お降りや忘れてました笑い方   
渡辺 淳子  ひとりは嫌群るるも嫌な曼珠沙華   酒屋閉め冬の朝顔咲かせいる  ふるさとの山河見たくて奴凧   
渡辺 敏也   友逝きて足裏に力秋深し  杖の音コツンコツンと冬隣  凡人の言葉遊びや冬の月   
         
         
         

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