一人一句集 (抽出100~103号)

 一人一句 {アイウエオ順。高点句・推薦句に選ばれたものは避けて、「投句Ⅰ」(各人5句投句)のコーナーから一句選んだ。<間瀬>}

 

 100号(8月集)

101号(9月集) 

102号(10月集) 

 103号(11月集) 

青木喜美子(愛知) 悲しみの底までひびく祭笛 帰省子の残してゆきし改札口 ふり返るたびに灯のゆれ地蔵盆 定型をくづしていたり雁の列
浅井沙衣子(愛知)  夕空は罠かもしれぬ梅雨の蝶 沙羅の花咲いて明日を軽くする  助産院廃業跡の秋の蝉  木の実落ち自分さがしをしています
伊串たき子(三重)  素足のままエデンの園に立ち入りぬ 白桃や誕生日など忘れました  苦瓜を刻めばすとんと来る異国  名月やダリの時計が動き出す 
石上 邦子(愛知)  踊れないワルツ青野で踊るかな  落ち蝉を幹にもどすもまた落ちる  サイゴンてふ不思議な街の青レモン  歳月やかつての戦場月のぼる
伊丹 余一(三重)  水鉄砲で逐い戦争を知っている  虫の音や夢のつづきの砂糖水  夏休み手の平に乗せるもの多し  先生の顔に戻れり水中花 
伊藤余四斗(愛知)  ふる里を一つ見つけて草苺  白木槿老ゆ兵を送りし橋の悲話  ご隠居の声よく通る盆踊り  峡の空食み尽くしたり羊雲 
稲場 千尋(三重)  陽炎をくぐりぬけ彼奴現れる  薬売りいっぺんに増える秋茜  半夏生水が旨いと逝きにけり  濡れ縁に駐在さんと秋茜
岩井蘇翠(岐阜)  黴の書に埋もれ不遇はどこからくる  梅漬けて母の昭和にさしかかる  空蝉の百ものがたりわたくしせむ  赤ん坊のずり落ちそうな秋西日 
大村 翔児(愛知)  かき氷一人ぼっちがやたらいる  八月十五日土着の鳩が胸を張る  吾亦紅時にはこつんと来る父情  借家住いで鈴虫を飼っている 
奥山 和子(三重)  真直ぐに見てはいけない狐雨  太陽も月も地球も丸い夏  夏のクレーン海から雲を引き上げる  曼珠沙華少女のまつげ伸びる伸びる 
小野寺小百合(愛知)  蛍袋母信長の顔ねという    虫の音の選手交代確認す   半島は母の横顔秋桜
北川 邦陽(愛知)  自転車は立っていにけり空襲下  ジュラ紀から私はオス月が好き  裏返す佐藤春夫の秋刀魚かな  廃屋に洗剤並んでおり涼し 
沓名 普子(愛知)  表面張力ゆらしてならぬ六月は  通り雨遠い話を連れて来る  青い芦葉先尖らせ愛と言う   ちりめんの赤い針箱鶴の来る
佐藤 梗子(愛知)  村起しの紫陽花鹿が喰い荒す  青林檎今は息子が口答え  太陽と月と名付けし西瓜売る   晩夏光許されている刻数う
鮫島 康子(福岡)  薄雲の壱岐対馬なり手を振るは誰  霧の知床感傷的に陽が崩れる  千の花滝と流れて母よ母よ   梨食って死にたし向うは水の国
首藤 明弘(東京)  いつのまに昭和過ぎさり蟇老いし  向日葵や啐喙同時邦陽かな  マニフェスト聞き流しをり百日紅  ケイタイに縛られぬ身や秋の風 
瀬戸優理子(北海道)  終わらない夏いつまでも十七歳  星涼し呼吸はみんな違うリズム  くっつけ合う素足ごめんと言えなくて  神の留守貧乏くじを取り替える
園 真理子(愛知)  戦後の命繋いだ証いも植える  梅雨ながし私のいろが薄れゆく  何事も無かった夏の帽子だった   持ち唄は一つだけなり鉦叩
竹内 一犀(静岡)  未来へと進むほか無し蛇の皮  蝉時雨目あき口あき耳があき  夕凪や舟漕ぐように飯を食う   描かれし赤き川にも秋の水
武川 琴理(愛知)  夏帯解く牛車の絵柄音軋む  夏休み訛りある子に近寄りぬ  炎帝の怒りに触れしおぼえなく   森の闇われも一匹の虫となる
 

 100号(8月集)

101号(9月集) 

102号(10月集) 

 103号(11月集) 

月野 ぽぽな(米国)   ギヤマンの破片のごとき返事する  終戦日胸に単音ひびかせて   星月夜電車のために走ったりしない
徳永 義子(宮崎)  立葵生き過ぎたとはまだ言わず  蹲る母抱卵の鳥に似て  ときめきの帆よジンジャーの初花よ  とりとめのない夢の尾の朝の冷え
豊原 清明(兵庫)  夏の風羊の群れの中の父母 夏深し木の声聞いて父出勤  ふるさとや肌がかぶれて蝉が鳴く   新学期老父夏帽じっと見る
永井 清成(愛知)    朴の華散ってるあたり妻の位置 風呂敷に七月の気を包みおり  意のままに脱げぬ蛇の衣ゆえ眩し  東京に出た月古里へ連れ帰る
丹羽美智鴣(愛知)  売り言葉買い手はとうに三尺寝   逆らわず乗り切ることだ泥鰌汁  ソクラテスもこめかみ貫くかき氷  たくましき狗尾草だあなどれぬ 
根津 洋子(愛知) 夏帽子ちょっとななめに父の影  蝉時雨へひとり悪魔にもなれず  それぞれの山へ帰ろう赤まんま   鴉鳴きやまず旅立ちは赤萩色
野崎 妙子(愛知)  延命の話にいたる青水無月 メロン切るそこより思想生まれけり  正論というは不確か草いきれ  日常へ戻るふたりの晩夏かな 
長谷川阿以(愛知)  風の尾を慕いつくつく蝉泣けり   行き来するあの世この世の鱧の味  親も子も地蔵顔なり盂蘭盆会   新涼やガラス金属やかましい
平川 義光(熊本)  炎天下俺の先行く俺の影  雲の峰血縁しだいに薄くなり  余震また不満だらけの蝉の穴  火の鳥の翔ちたる後の彼岸花 
平子  純(愛知)  畑で食う手割りスイカや亡母の汗  多治見線は箱入りアイスの味がする  蝉が来て小娘のように鳴きはじむ   九月選挙蜂の戦争始まった
藤原美恵子(岡山)  肩怒らせ日は傾きぬ立葵  永遠の空腹青い積乱雲  畳にぽんと眼鏡外して鰯雲   缶蹴って紅葉の地球真ったいら
夫馬瑳衣子(愛知)   穀象は行方知れずになったまま  耳たぶに秋が訪れシンフォニー   祈るという静かなことば十三夜
増田 天志(滋賀)  団塊や案山子のひとつチェ・ゲバラ   神さまは着たきり雀ゆりの花  月赤し舟を浮かべる歌舞伎者   こぼれ萩庭より舟を漕ぎ出さむ
間瀬奈津子(愛知)  焼茄子のひとつは一口大に切る 背中から焦げてゆくかな草取り女  蝉鳴いて一人に一つ身上談   ほんとうは白でいたいの酔芙蓉
松井 政典(三重) ちょっとだけ出し惜しんでる夏の青 シャーペンの芯詰まったままで夏終る  揚げ餅の程よき固さ初嵐  自然薯に齧り付きたる少女かな 
松田 英子(愛知)   可憐なる過去のありけり花茨 会うたびに母遠ざかる梅雨晴間  限界です老人介護木下闇   梅花藻や身を委ねるも処世術
湯浅真理子(愛知)  紫陽花や八方美人になり切れず   独学やめだかと学ぶ宇宙学  贅沢は素敵と答える生身魂  パソコンをリセットさせる虫の声 
らふ亜沙弥(神奈川) 凌霄花思い当たらぬ事ばかり  目が合えば目をそらすなり夏の蛇  芋虫や好きなところは五つほど  皆で行く墓参の時間母が決め 
渡辺 淳子(愛知)  ラメ入りの雨が降ります濃紫陽花 羅や三代前のよろけ縞  その先の見えては消ゆる水澄んで  稲架という結界越しに挨拶す 
渡辺 敏也(愛知)   短夜やちびし鉛筆捨てっちまえ    河童忌や俳句心と絵心と  夏の月スローバラードで朝迎え  かなぶんに好かれ一緒に仕舞風呂
 

 

 

104~107号へ      「卵の会」トップページに戻る